概要

FabFilter Saturn 2は、サチュレーション、ディストーション、アンプ系の歪み、ローファイ処理を一つにまとめたマルチバンド・ディストーションプラグインです。真空管、テープ、トランス、ギターアンプなどに着想を得たモデルを収録していますが、特定の一台の実機を忠実に再現する製品ではありません。複数のアナログ的キャラクターとデジタル処理を統合した、デジタル・オリジナル系のプラグインです。

最大6バンドに分割し、帯域ごとに異なるStyle、Drive、Mix、Feedback、Dynamics、Tone、Levelを設定できます。低域をほぼクリーンに保ちながら中高域だけに倍音を加える、ベースの基音と中域を別々に処理する、Side成分の高域だけを歪ませる、といった細かな処理が一画面で完結します。

穏やかな倍音付加からビットクラッシュやピッチダウンを伴う特殊効果まで扱える、総合的な歪みプロセッサーです。

28種類の歪みスタイル

各バンドでは、次の28種類から個別にスタイルを選択できます。

系統 収録スタイル 傾向
Tube Subtle / Clean / Warm / Broken 滑らかな倍音から崩れた真空管風の歪み
Tape Subtle / Clean / Warm / Old 高域の丸み、密度、古いテープ風の色付け
Amp American Tweed / American Plexi / British Rock / British Pop / Smooth / Crunchy / Lead / Screaming / Power アンプ風の中域、クランチ、強いリード歪み
Saturation Subtle / Gentle / Heavy 汎用的なサチュレーション
Transformer Subtle / Gentle / Warm トランスに着想を得た輪郭と厚み
FX Smudge / Breakdown / Foldback / Rectify / Destroy スミア、ピッチダウン、整流、ビットクラッシュ系

Subtle系はバス処理、Amp/FX系は積極的な音作りに向きます。同じDrive量でも反応が異なるため、出力音量を揃えて比較してください。

ツマミ・パラメーター解説

マルチバンド表示とクロスオーバー

上部の表示はリアルタイム・スペクトラムアナライザーを兼ねており、任意の位置で最大6バンドまで分割できます。クロスオーバーのスロープは6、12、24、48dB/octから選択でき、各バンドにはSolo、Mute、Bypassがあります。

まず1バンドでスタイルを決め、必要になった段階で2~3バンドへ増やすと変化を把握しやすくなります。

バンドコントロール

パラメーター 役割
Mix 選択バンド内のDry/Wet比率
Feedback / Freq 処理音を入力へ戻す量とリンギング周波数
Dynamics 右方向でコンプレッション、左方向でゲート/エクスパンション
Style 28種類の歪みアルゴリズムを選択
Drive 歪み段へ送る量。上げるほど倍音と非線形性が増加
Tone Bass / Mid / Treble / Presenceで処理音を調整
Level 選択バンドの出力レベル
Drive Pan / Level Pan L/RまたはM/S間で処理量を偏らせる

Driveにはレベル補正がありますが、比較時はバイパスと出力音量を揃えてください。

Dynamicsは歪みへ入る信号の密度を整える機能で、右が圧縮、左がゲート/エクスパンション方向です。

モジュレーション

XLFO、Envelope Generator、Envelope Follower、MIDI Source、XY Controller/Sliderを使用でき、ソースを対象パラメーターへドラッグ&ドロップして割り当てます。Drive、Mix、Tone、Level、クロスオーバー位置など、多くの連続パラメーターを動かせます。

Envelope FollowerのTransientモードは短いヒットを検出します。外部サイドチェインや別バンドをトリガーにしたリズミックな歪み処理も可能です。

Linear Phase / High Quality / M/S

High QualityはGoodが8倍、Superbが32倍のオーバーサンプリングです。SuperbはCPU負荷が高いため、必要な場面や書き出し時に向きます。

Linear PhaseはクロスオーバーとHigh Quality処理に適用されます。Tone EQやアンプ/キャビネット処理は対象外です。

Channel ModeはL/RとM/Sを切り替えられます。M/SではMidとSideのDrive量やLevelを変えられるため、センターを保ちながらSideの中高域だけに倍音を加える処理が行えます。

定番テクニック・実戦での使い方

ボーカルの存在感を足す

低域はほぼ未処理にし、中域へSubtle TubeまたはGentle Saturationを薄く加えます。高域のMixを控えると歯擦音を抑えやすくなります。

ベースの低域を守る

サブ帯域のDriveを控え、中域へWarm Tube、Warm Tape、Transformer系を加えると、基音を守りながら再生環境を選びにくい倍音を補えます。

ドラムバスのパラレル歪み

Warm Tape、Crunchy、British Rockなどを強めにDriveし、バンドまたはグローバルMixで原音へ戻します。キックが潰れすぎる場合は低域バンドのDriveを下げ、中高域だけを強く処理します。Envelope FollowerをDriveへ少量割り当てると、ヒット時だけ歪みを増やせます。

ミックスバス/マスタリング

Subtle Tube、Subtle Tape、Subtle Saturation、Subtle Transformerを低いDriveで使います。まず1バンドで試し、マルチバンド化する場合も2~3バンド程度に留めると判断しやすくなります。処理前後の音量を厳密に揃え、Linear PhaseとHQはCPU負荷やトランジェントの感触も含めて選びます。

M/Sで広がりを作る

Side側の中高域へだけDriveを多めに与えると、センターのキック、ベース、ボーカルを保ちながらステレオ成分の倍音を増やせます。低域のSide成分は控えめにし、モノ互換を確認します。

プロ・ユーザーの評価

Sound On Soundは、微細な色付けと明確なディストーションの双方で音質が良く、初代より操作を理解しやすいと評価する一方、多数のバンドとモジュレーターを使うと複雑になると指摘しています。

Attack Magazineも柔軟性とモジュレーション操作を評価しています。特定実機の再現は専用製品が速い場合もありますが、帯域、M/S、時間変化まで設計できる点がSaturn 2の強みです。

こんな人におすすめ

自然な倍音付加と過激なディストーションを一台で使い分けたい人、特定帯域だけにサチュレーションを加えたい人、M/Sやモジュレーションまで細かく作り込みたい人に向いています。

一方、毎回一つのツマミで同じアナログ感を加えたい場合や、特定実機の挙動を重視する場合は、シンプルなサチュレーターや専用エミュレーションの方が作業は速くなります。

システム要件(System Requirements)

項目 内容
対応OS(Windows) Windows 11 / 10 / 8 / 7 / Vista、64bit / 32bit
対応OS(macOS) macOS 10.13以降、64bit、Apple Silicon / Intel
対応フォーマット VST2 / VST3 / AU / CLAP / AAX Native / AudioSuite
必要なホスト 各フォーマットに対応するDAW、またはPro Tools
外部サイドチェイン 対応。Envelope Generator/Followerのトリガーに使用可能
認証方式 FabFilterライセンスキー。iLok不要
アクティベーション Personal Licenseは最大3台のデバイスで使用可能
提供形態 有料の永続ライセンス。単体および各種バンドル。30日間の評価版あり

対応状況は更新される可能性があるため、導入前にFabFilter公式製品ページと最新インストーラーを確認してください。

出典

  • FabFilter公式製品ページ「FabFilter Saturn 2」
  • FabFilter公式オンラインマニュアル「About FabFilter Saturn 2」
  • FabFilter公式オンラインマニュアル「Band controls」
  • FabFilter公式オンラインマニュアル「Interactive multi-band display」
  • FabFilter公式オンラインマニュアル「Modulation」「Envelope follower」「External side chaining」
  • FabFilter公式オンラインマニュアル「Input and output controls」
  • FabFilter公式FAQ「Buying FabFilter plug-ins」
  • Sound On Sound「FabFilter Saturn 2」(Sam Inglis、2020年8月)
  • Attack Magazine「FabFilter Saturn 2」(Adam Douglas、2020年7月)